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担当とハプバーで
第3章 踏み入れた入口

 コスプレの価値ってこれもあるんだ。
 別人化。
 その人が普段決してしないであろうスタイルにハマった姿を見せてくれる。
 もう一度見返すと、眉もちゃんと金に染めて、少し濃いめにアイラインを引いてる。
 カラコンは、赤かな。
 いつもの目つきと違う。
 一時停止をしてじっと眺めてしまう。
 なんだろ。
 決してしっくりは来ないんだけど、いつまでも見てたくなってしまう。
 原作だと確か百七十くらいだし、長身のイメージは無いキャラなのに。
 こんな荒々しい仕草なんて、流れてくる広告に出てこないのに。
 その次はタツが画面に向かってジャブを打ち、ナオキが諦めるように頭を抱えて首を振った。
 タツも色気やばいな。
 普段もウルフヘアだから輪郭は変わらないけど、やっぱり金髪ってその人の顔の強さを際立たせる気がする。
 元々の髪色に近いナオキは、サラサラボブが似合わなすぎて笑ってしまう。
 所謂盛り髪とのギャップがすごい。
 シークバーをそっと動かしてハヤテの番に戻す。
 いや、赤マスク似合うな。
 普段もしてそう。
 黒マスクよりもイメージに合う。
 サングラスかけてないと、目力が凄まじい。
 つり上がった目尻が笑うと少し下がるのもよく見える。
 どうしよう。
 全然興味なかったけどアニメ見ようかな。
 この見かけでなんてセリフを吐くのか想像をふくらませたい。
 すぐにサブスクアプリに飛んで、一話を再生した。

 脳内でハヤテに置き換えつつ、結局祥里が帰ってくるまでにワンシーズン見終えてしまった。
 内容も面白かったし。
「そろそろ衣替えしないとなー」
 ベッドに腰掛けながら祥里が言う。
 そういえば、そうだ。
 もうすぐ冬本番。
 肌寒い季節がやってくる。
「コートクリーニング出しとく?」
「んー。しまう前に出したよな多分。とりあえず着てから考える」
「早いね、一年」
「だな」
 会話終了とばかりに息を吐いて、祥里は布団に入った。
 コートか。
 何着てこうかな。
 タバコとかお酒の香りが着くと洗えないから、目立っちゃうよね。
 消臭剤かけて、ベランダに干しとく?
 考えながら自嘲してしまう。
 それはもはや浮気対策なのよ。
 これまでは洗濯機の中にいれて蓋をすれば済む話だったのに。
 いや、コートを羽織る前に通うのを辞めればいい話なのに。
 その選択肢はない。
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