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担当とハプバーで
第5章 呼吸もできない沼の底
その日も月に数回来るメンタルの波に、昼に起きた時から今日は無理だなと悟った。
メッセージを確認して、アフターを入れないようにして、客には二十時半までに来てと指示。
出勤までにジムに向かい、体を動かしながらもこれじゃねえなと再確認する。
タツやナオキはどうやって発散しているのかと相談したことがある。
重めの客に泣きつかれた時。
好みの姫が飛んだ時。
売り上げが落ちた時。
リスカを見せられた時。
無理やり飲まされた時。
ナオキは散財、タツは旅行かワンナイト。
ホストになってから、それまでの交友関係は身バレのために絶った。
大金積まれて客との旅行か、動画の企画だけ。
散財するにも服以外に興味がない。
そこでタツに教えてもらったのがインテイス。
初めて行ったのは二年前。
アプリで釣った同い年の女とカップル料金で入った。
結局違う女とプレイルームにもつれ込んだが、好みのプレイじゃなかった。
連絡先をとしつこかったので、しばらくはナオキのクラブに同行するようになった。
それから半年後、二回目。
通い慣れてそうな女に声をかけた。
その方が後腐れない別れ方が出来ると知った。
その後は月に二回程度。
気分によっては利用しない月もあるくらい、メンタルに合わせて足を運んだ。
彼女を作れとマサヤに言われたが、歴代彼女がことごとく重く、別れ際に苦労したのでその気はない。
動画効果で目標八億の道もそう遠くないし、ハワイに行ってから恋愛を考えたって遅くない。
そんな矢先に凛音の来店は心を揺さぶった。
こちらから壁を取り除かなくても、丸ごと好意を向けてくるファンという存在。
これだけ払ったからと対価を求めるわけでもなく、マサヤと話しているくらい過去の話題に通じる知識量。
「なんで来なくなったかねえ」
姫を見送ったエレベーター前で呟くと、ニイノがポンポンと腰を叩いてきた。
「凛音ちゃんのこと考えてんの?」
「ニイノ王子ならどう引き止めてましたかね」
「んー……無理じゃないかな。ああいうタイプって自己完結系だろ。ハヤテのこと好きすぎるから早めに距離置いて、自己防衛力高いよね」
「あー……今日は3Pしよ」
「うっわ、性癖暴露やめて」
「ニイノさんも混ざりません?」
「俺彼女いんの知ってんだろ」
オレンジのスーツが先に店内に戻っていく。