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女の性癖、男の嗜好…(短編集)
第25章 梨香 32歳

軽トラックの荷台に収穫した梨の入ったコンテナーを
次々と積み上げて行く。

今年は思うように果実が実らなかった。

あんなに手入れをしても
手に入る代金は二束三文です。

「ねえ、あなた…不動産屋さんに行ってみない?」

「行ってどうするんだい?」

手入れが行き届かなくて遊ばせている農地が半分ほどある。
それを売ってしまえば、今の古い家屋を建て直す事が出来る。

そのような考えを夫に提案してみた。

「おいおい、先祖代々守ってきた土地だぞ。
俺の代で縮小なんて出来るかよ」

私たちの会話を聴いていた姑さんが横から口を挟む。

「全く…とんでもない嫁が来たもんだわね
若い自分がもっと働いて遊ばせている土地にも作物を植えようとは思わないのかねえ」

そんな簡単に言わないでほしい。
今だって足腰が悲鳴を上げるほど働いているのに
これ以上に作業を増やすなんて真っ平だわ。

この家に嫁いできてから
ワタシと姑とは仲が悪い。
私を労るということさえ知らない。

そりゃそうでしょうとも
私を作業人か何かだと思っているんでしょうから…
だいたい、私は農作業なんて性に合わない。
土地持ちだと豪語する夫に土地を売れば遊んで暮らせると唆されて嫁にきたようなものだ。

こんな辛い毎日でも
夫に毎晩可愛がってもらえているのなら
いくらでも我慢出来るのだけれど
生憎と夫はアッチの方は淡白で
ろくに満足させてもらった事がない。

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