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第8章 『仁さんの初体験』

真奈美には甘い
砂糖だらけのココアを用意して。
自分にはブラックコーヒーを用意した。

ソファにゆっくりと腰をかけて、
仁がコーヒーカップを傾ける。


『僕の初体験は…１４歳の夏…だったよ？』


１４歳の夏…とかって、１４歳の母…みたい。

そんなタイトルの小説とか
邦画がありそうな感じがするなと
真奈美は思いながら仁の話に耳を傾ける。


「１４歳…の…夏休み…ですか？」

『そうそう、その夏休みの前にね…
彼女が…出来たんだよ。
隣のクラスの同級生の彼女がね』

「じゃあ…、その…
同級生の彼女さんと…ですか？」

ズズズッ…と自分が淹れたコーヒーを
仁が啜る様にして飲みながら、
何故か真奈美の言葉にはすぐに返事をしなくて。

すすす～っと視線を
真奈美から逃げる様に反らせて行く。

『あ～、その辺り…なんだけどね…？
実はこう…あれこれ…とあってさ。
僕の初体験の相手は、
その彼女じゃないんだよねぇ～』


処女と童貞の…甘酸っぱい様で、

ほろ苦い、青春の１ページの様な…

そんな展開は…ないと。

そう…期待した端から、

それを仁に壊されてしまった。


「ええっ、じゃあ…ですよ？
同級生の彼女さんを差し置いて、
仁さんがお済ませになった
お相手さんは、一体どこの
どちら様…なんですか？」