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はい。もしもし、こちら、夫婦円満本舗です。
第12章 『真奈美と仁』
そう言われてしまえば、
今だって確かに
仁さんの家に泊ってるんだから。
泊まる先が温泉旅館になるだけで、
一緒に泊まるという事実には変わりなくて。
実質同じだと言う現実に気が付いた
真奈美のハッとした顔を見て
仁が吹き出しそうになるのを必死になって
自分の口元を押さえて震えていたので。
真奈美がむすっとしながら、
鋭い視線を仁に向けて
睨みつけていたのは
言うまでもない話だったのだが。
こうして…、夫婦円満本舗の初めての
慰安旅行は…仁さんの突然の思い付きによって。
助手であり、唯一の従業員である真奈美には
何の一切の相談もなく…
決定してしまった訳…なのである。
『じゃあ、そう言う事だからさ。
仁さんも、お風呂入って来るからね』
ドライヤーで髪の毛を乾かしながら、
あれこれと考えなくていい事を
真奈美は考えてしまっていて。
これは…もしや、デートなのでは…?
と思ってハッとしたのだけど、
でも考えてみれば。
仁さんが…私とデートがしたくて、
行こうと誘ってくれたんではなくて。
仁さんのお友達の、
貴虎さんが…くれたチケットな訳で。
それも…温泉に…夜は…、
仁さんと…、お泊りっ…するなんて…。