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いい女2 惜別…
第1章 惜別…
 ⑨

 3年前…

 彼の奥様は…

 血液のガンと云われる『急性白血病』を突然発症し、あっという間に亡くなってしまったそうだ…

 しかも…

 亡くなってから分かったそうなのだが、妊娠もしていたそうである…


「妻は…アイツは…」

 キッチンカーで移動カフェのお店を出すのが夢で…

 白血病発症の直前までオープン準備に勤しんでいたんですよ…

「ほら、自分は外車ディーラーしているから…

 他のキッチンカーと差別しようって、特注でわざわざフランスのメーカーに直接オーダーして…

『シトロエンのHバン』をキッチンカー仕様に改造して輸入したんです…」


「えっ『シトロエンのHバン』って?」

「はい、知ってるんですか?」


「あ、うん…」

 知っている…

 いや、知っているもナニも…

 なんていうことだろうか?…


『そうだよなぁ…
 将来子供ができたらさぁ…

 シトロエンのHバンがいいや…

 そのクルマはさぁ…
 フランス車のシトロエンの…
 
 まあ簡単にいうとさぁ、ワンボックスカーだよ…

 うん、そして少しキャンピングカー仕様に改造してさぁ…

 子供と一緒にあっちこっちさぁ…』

 生前の彼がそう云っていた…

『シトロエンのHバン』


 それが…

 それが繫がった…

 
「そして、ようやく半年前に、そのキッチンカーの『シトロエンHバン』を処分して…」

 いや、処分できて…

 ようやく妻の面影から卒業できて…

 ううん、惜別できた…かなぁ…

 彼は、そう云ってきたのだ。

「妻の面影からの卒業と惜別ですよ…」

「卒業と惜別…」

「だから、スパイダーも…」

 わたしはこの不思議なクルマとの繋がりに…

 彼、あの人からの…

 不思議な力によるメッセージなのかもしれない…

 そう感じていた…





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