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後宮に蝶は舞いて~Everlasting love~第二部
第37章 秋桜(コスモス)の夢
ホン内官は先刻までと違い、沈んだ声で言った。
「ここ一年ばかりの邸下は到底、見てはいられませんでした。私が何も申し上げても、いつも上の空で、ああとか、そうか、とかしか仰せでない。殿下にお叱りを受けて以来、侍講でミスをすることはなくなられましたけど、私といるときは以前と何も変わられちゃいないんです。ええええ、私には判ってます。邸下のお心は今、この宮殿にはない。邸下は松月楼にお心を残したまま、お身体だけ、ここにあるんですよね」
「ここ一年ばかりの邸下は到底、見てはいられませんでした。私が何も申し上げても、いつも上の空で、ああとか、そうか、とかしか仰せでない。殿下にお叱りを受けて以来、侍講でミスをすることはなくなられましたけど、私といるときは以前と何も変わられちゃいないんです。ええええ、私には判ってます。邸下のお心は今、この宮殿にはない。邸下は松月楼にお心を残したまま、お身体だけ、ここにあるんですよね」