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第12章 新たに生まれいでて

　持ち出すものといっても、殆ど無い。何しろ雪鈴は着の身着のままでここに来たのだ。ここにあるものはすべてコンがくれたものだし、雪鈴の持ち物ではない。だから、全部置いてゆく。




　ふと彼女は文机に視線を落とした。手紙を書くときに使った文鎮代わりの兎を見つめる。亡き良人ハソンの形見の品である。この屋敷にいる間も、書き物をするときはずっと使っていた。