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張型と旅をする女
第3章 箱の中
カチャリ、と掛金が外れると
まずは左側の扉からゆっくりと開いた。
暗くて中がよく見えない。
そして残りの右半分の扉が開く。
「ひぃっ」
「うふふふっ」
「私」は言葉どころかまともな声すら出なかった。
箱の中にあったのは━
垂直に自立した大きな男性器であった。
正確にはそれを模した張り型だ。
「私」が言うのも何だが、大層立派である。
根元には2つの睾丸がついていて、まるで男根を自立させる支えのようだ。
血管や裏筋が浮き出、亀頭の傘の立派な張り。深い溝。
今にもビクビクと震えるのではとさえ思ってしまう。
「これは…樹脂製ですか。精巧に作られていますね」
「私」は噂には聞いていたが実物を目にするのは初めてで、わずかばかり興奮していた。
エログロ話が好きな友人によると、未亡人など相手のいない女性が自身の身体を慰めるために使うのだという。
もしくは、加虐嗜好の変態趣味の男が情婦を辱めるために。
なんと張り型を制作する職人がいて、その殆どは木彫りだと聞いてた。
「私」はハッとした。
いい歳をした女が張り型を旅先にまで持ってくる…
目の前の女は相当な好き物で、きっとコレ以外の物では我慢がならないのだ。
一瞬にして喉が乾いたが、女の注いだ酒を飲む気にはなれなかった。