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張型と旅をする女
第3章 箱の中
次第に女の指の動きが激しくなり、今度は2本の指の股に張り型を挟むようにして上へ下へと擦りしごく。
しごいた流れで根元から睾丸へ指を這わせ揉む。そしてまた肉棒へと指が戻る。
「あ」
女と「私」は同時に声を揚げた。
張型の亀頭の先から、透明な粘液がつつっと流れた
…ように見えたのだ。
これは本当に造り物の張り型なのか。
陰りと女の指でよく見えないが、脈を打っていないか。
色も生々しく赤黒い。触れると熱を帯びているのではないか。
生きている
生きているのだ
これは造り物なんかではない
旅の出発前、東京駅のホームのベンチに読み捨てられていた大衆紙の見出がふと浮かんだ。
“待合にグロ・猟奇殺人”
“模倣か。絞殺され急所を切られた情夫”
“美人家政婦、男を残し消ゆ”
女の言葉が頭の中でこだまする。
「わたくしは独占欲が強く強欲だわ」
「愛している方と一時も離れたくないの。心だけでなく、身体も」
━身体。
身体、とは一部分になってしまったがこの箱の男根のことではないのか。
しかし、切り取られてなお生きている。そんなこと有り得るのか。
でも確かに、高揚し震え誇張し亀裂は濡れていた。
どういうことだ。「私」の目が、いや精神がおかしくなったのか。
「ダメよ」
女は「私」の右手の甲をピシャリとはたくと、静かに観音扉を閉めて箱の向きも変えてしまった。
「私」は無意識に手を伸ばし、男根に触れようとしていた。