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張型と旅をする女
第2章 出会い
なかなか切符の取れない人気の寝台列車であったから、ラウンジはさぞかし賑わっているだろうと敢えて時間をずらし、明方に行ってみると利用者は2人しかいない。
通路の両側に対面式のシートがあり手前側に男性がひとり、車両の一番奥のシートに和髪に結った女性がひとりこちら側を向いて座っていた。
ひとりであれば普通は進行方向に向け座りそうなものだが、その女性は逆向きに座っている。
「私」は先の2人の丁度中間辺り、女性の対局になるシートに進行方向に向け座った。
しばらく夜が明けたばかりの景色を眺めていると、列車の揺れる音に紛れてぼそぼそと話声がする。
扉を開け閉めする音はしなかったから、3人の他はいないはずだ。
気になり聞き耳をたてていると、今度はクスクスと女性の笑い声がする。
背もたれに隠れて見えなかっただけで、実は女性の向かいにもう一人いたのかもしれない。
30分程経って後ろの席にいた男性は自室に戻ったのだろう、コツコツと靴音がしたあと扉がバタンと閉まった。