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【全話版】ストリート・キス
第3章 始まりはストリート・キス
小さな居酒屋だった。狭いカウンターとテーブル席が二つほどの十人も入ればいっぱいになってしまいそうな広さだが、客は僕たちしかいなかった。彼女と何を話したのかよく覚えていない。覚えているのは彼女のタバコを吸う姿だ。電子じゃない煙が出るタバコをバッグから取り出した彼女は、小さな口に一本くわえた。
「火をつけてくれる?」
渡された100円ライターで火をつけてあげた。斜め横を向いて煙を吐く。なんだかちょっと気だるい感じで色っぽい。職場で見る彼女とはぜんぜん違う。かわいくて若い印象だったけれど、僕から見たら職場の同僚で先輩、ただそれだけの存在だったのに、今は一人の女性として、僕のそばで横座りになってタバコを吸っている。
「江田くんも吸う?」
聞かれてちょっと考えてからうなずいた。新しいタバコをくれると思っていたのに、彼女が吸っている火のついたタバコを差し出され、わけもわからず受け取って口にくわえてから、いきなりそこで気がついた。
…ああ、これって間接キスだよな。
フイルターになすったようなかすれた赤い色があった。彼女の口紅だ。それを口にくわえ、彼女の真似て横を向き、そっと煙を吐く。
「火をつけてくれる?」
渡された100円ライターで火をつけてあげた。斜め横を向いて煙を吐く。なんだかちょっと気だるい感じで色っぽい。職場で見る彼女とはぜんぜん違う。かわいくて若い印象だったけれど、僕から見たら職場の同僚で先輩、ただそれだけの存在だったのに、今は一人の女性として、僕のそばで横座りになってタバコを吸っている。
「江田くんも吸う?」
聞かれてちょっと考えてからうなずいた。新しいタバコをくれると思っていたのに、彼女が吸っている火のついたタバコを差し出され、わけもわからず受け取って口にくわえてから、いきなりそこで気がついた。
…ああ、これって間接キスだよな。
フイルターになすったようなかすれた赤い色があった。彼女の口紅だ。それを口にくわえ、彼女の真似て横を向き、そっと煙を吐く。