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【全話版】ストリート・キス
第3章 始まりはストリート・キス
 女性に年齢は聞いてはいけないというセオリーが頭をよぎったが、酔った勢いで聞いてみた。
「ふふ。いくつに見える?」
「ええと…」
 歳を聞かれた女性が言いそうなセリフを返され、しばし考えてから、印象どおりに「25歳」
と言ったら
「うまいなあ江田くん」
 笑いながら、実際の年齢を教えてくれた。
「わたし、とっくに三十路なんだよ。おばさん。子どももいるし」
「ぜんぜん見えません。それにおばさんなんかじゃないです。すごく若く見える」
「ふうん。ねえ、彼女とかいるの」
 注いでくれた生ぬるいビールを飲み、首を振る。
「いません。モテないんで」
「嘘だあ。モテそうな顔してるよ」
「嘘じゃなくて、彼女いない歴二年かな」
「へえ。ねえ…」
 急に彼女が体をくっつけてきた。僕の腕に彼女の胸の膨らみが押し付けられ、持っていたグラスからビールが跳ねた。
「宴会が終わったら、二人で飲みに行かない?」
 耳元で彼女がささやく。湿った甘い声だった。かわいい声なのに大人の女の艶っぽさがある。
「あ、はい。行きますか」
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