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人質交換を託された女
第9章 板挟み
佐伯さんはずっと俯いていた。瞼(まぶた)が見え、瞬きをして、目を細めているようだった。彼女の背後に座るリーダーは、何かを待っているような面持ちだった。
彼女の顔が上がり、再び視線を交わす。私をじっと見つめる彼女。私も床に顎を乗せて、猿ぐつわを咬まされた姿で、彼女を見つめた。
リーダーが彼女の横にあるロープを手にした。それは彼女が強運を引き当て、拘束から解放された、まさに同じロープだった。まるで『君用のロープだ…』と言わんばかりに、彼女にそれを見せつけていた。
佐伯さんはロープを目で追い、また私を見た。彼女が見ていたのは、人質交換を託された警察官だった。その任に就くなり、男たちに捕らわれた。両腕は後ろ手に縛られ、胸を開けられ、自ら立ち上がれない、抗うことが出来ない、うつ伏せにされていた。口には猿ぐつわを咬まされ、解決の糸口すらつかめず、男たちの一方的な要求に屈してしまった、そんな哀れな女の姿だったに違いない。
彼女の顔が上がり、再び視線を交わす。私をじっと見つめる彼女。私も床に顎を乗せて、猿ぐつわを咬まされた姿で、彼女を見つめた。
リーダーが彼女の横にあるロープを手にした。それは彼女が強運を引き当て、拘束から解放された、まさに同じロープだった。まるで『君用のロープだ…』と言わんばかりに、彼女にそれを見せつけていた。
佐伯さんはロープを目で追い、また私を見た。彼女が見ていたのは、人質交換を託された警察官だった。その任に就くなり、男たちに捕らわれた。両腕は後ろ手に縛られ、胸を開けられ、自ら立ち上がれない、抗うことが出来ない、うつ伏せにされていた。口には猿ぐつわを咬まされ、解決の糸口すらつかめず、男たちの一方的な要求に屈してしまった、そんな哀れな女の姿だったに違いない。