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人質交換を託された女
第9章 板挟み
脳内にはクモの糸に絡め取られた蝶が浮かんだ。そして一筋縄ではいかないことを理解しながらも、無駄な抵抗に拍車がかかり、もつれた糸を辿るように必死にもがき、出口の見えない網の中を彷徨(さまよ)っているようだった。
肉体の細部に至るまで、緻密に掛けられた縄から発せられる音は、絶妙な旋律にも似た調べだった。その肉体の節々が耽美な封印で紡がれる音を、目を閉じて聴いていると、縄張りという歯がゆい境界線を意識する。
再び一線を越えてしまうわけにはいかない…という、己を律しようとする自制心が働けば働くほど、肉体の抜け道からは、愛液という女の熱い本音を感じてしまう。その誘惑が、「ァン…」と吐息を吐き出させ、肉体を熱くさせる。
目を開けば、佐伯さんの胸を隠す腕が、彼女の呼吸に合わせ動いていた。その直後、佐伯さんが小さく、「あっ…」と声を出し、体と脚が前に動いていた。
私の背後には補佐役の男が近付き、うつ伏せの私の体に覆いかぶさってくる。首を左右に振り、男の両手が近くに置かれていることを知った。どうすることもできなかった。
私は彼女の危機も救ってあげられなかった。
「はっ…」と佐伯さんが慌てた声を出した。
肉体の細部に至るまで、緻密に掛けられた縄から発せられる音は、絶妙な旋律にも似た調べだった。その肉体の節々が耽美な封印で紡がれる音を、目を閉じて聴いていると、縄張りという歯がゆい境界線を意識する。
再び一線を越えてしまうわけにはいかない…という、己を律しようとする自制心が働けば働くほど、肉体の抜け道からは、愛液という女の熱い本音を感じてしまう。その誘惑が、「ァン…」と吐息を吐き出させ、肉体を熱くさせる。
目を開けば、佐伯さんの胸を隠す腕が、彼女の呼吸に合わせ動いていた。その直後、佐伯さんが小さく、「あっ…」と声を出し、体と脚が前に動いていた。
私の背後には補佐役の男が近付き、うつ伏せの私の体に覆いかぶさってくる。首を左右に振り、男の両手が近くに置かれていることを知った。どうすることもできなかった。
私は彼女の危機も救ってあげられなかった。
「はっ…」と佐伯さんが慌てた声を出した。