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人質交換を託された女
第9章 板挟み
佐伯さんは、そんな私の状況を、姿勢を正され、顔を上げて見ていた。自身の体験から、きっと両腕が背中側で、肘を畳んで組まされ、その腕を束ねるようにされたはずだった。彼女は男が求める理想の『人質』の型にはめられ、縄で自由自在に操られる人形になってしまう。

彼女が男の力強さに屈したように見えた。苦しさから両肩が上がり、「ハァッ…」と甘い吐息が漏れていた。おそらくロープが彼女の腕を捕え、しっかりと縛ったのだろう。立てていた両膝が少し動いた。よく見れば、ストッキングに包まれた左右の爪先が床から浮いていた。

彼女は椅子に括り付けられた拘束と違い、腕に隙間なく巻かれたロープや、しっかりと縛られ、ギュッと留められるロープに、何をしても手遅れと悟ったのかもしれない。空気を欲する魚のように口をパクパクさせ、諦めの表情を浮かべ、全身の力は魂が抜けたようになった。最後には俯いて、立てていた両膝を下げ、ゆっくりと両脚を爪先まで伸ばしていた。

「もうダメみたいだな…」と補佐役の男が耳元で話しかける。
「ァ…ァ…ァ…」としか答えられなかった。

無口だった男が、女の肉体の奥までを到達し、快楽のあえぎ声を出させ、身悶えをさせたことで、饒舌(じょうぜつ)になっていた。この男の問いが、私のことを言っているのか、佐伯さんのことを指しているのか不明だった。

「ァン…ァン…アッ…んぐぅ…」
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