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人質交換を託された女
第10章 感情との葛藤
目の前がチカチカしていた。瞼を閉じても、黒いスクリーンにはダイヤモンドダストのような光が見える。

佐伯さんの姿は、視界に塵(ちり)のように小さな光が点いたり、消えたりして、古いフィルム映像の中に映っているようだった。

彼女は体を前屈みにして、私の方を向いていた。きっと彼女は私を心配してくれたのだろう。彼女の目は私を憐(あわ)れんでいるようだった。まだそんな余裕が…という気持ちで彼女を見つめ返した。

縄が彼女の胸元を横切る。彼女はすぐに胸元から顔を背けていた。体を前屈みにしたまま、口を真一文字にして、明らかに縄を拒否していた。すぐ体を縄に取り囲まれ、縄に絞られ、「ンン…」と肉体の狭苦しい感覚を小さな声で表現し、縄目の恥辱に耐えていた。縄がよどみなく体を這い、彼女は体をよじり、技を掛けられたように、ジタバタと抵抗する。その度に彼女の体が後ろに引かれ、反抗の芽が摘まれていく。縄に上体をグイッと引かれ、姿勢を正され、肉体の窮屈さを実感し、顔がしかむ。縄が締り、肉体の乱れが「ァ…ァ…」という追い詰められた声と共になくなる。そして再び縄が体を這うのを感じると、肩を激しく揺すり、上体を前に倒そうとする。何度も縄が体を包み、肉体の力が無にされる。
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