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人質交換を託された女
第11章 眠りから覚めた遺伝子
「人間は生死を分ける危機的状況に陥ると…より本能的になるらしい…君の体もそうなっているんじゃないか…」

そう問われた彼女は「ンンッ…」と声を上げ、必死に首を横に振っていた。

私はリーダーの言葉が身に染みて分かっていた。刺激を感じ取るセンサーが限界値を超え、肉体の奥底にある『特別なスイッチ』をオンにさせる。眠っていた遺伝子が働き始める。リミットを超えた刺激を感知し、肉体の寛容性を高め、いち早く順応し、神経まで触発され、肉体を左右に、上下に波打たせてしまう。

リーダーが「試してみるか…」と言うと、佐伯さんの上体が床から上げられ、無力感に支配された彼女の表情が見えた。そのまま立ち上がらされ、私の頭の方にゆっくりと歩みを進めていた。
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