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人質交換を託された女
第13章 最後の女
「はい…そうです…田口さん…」
私は再び男の名前を呼んだ。今回は名前を呼んだことを咎めらなかった。

代わりに、「前に進んで…」と後ろから促された。

一歩、一歩と、ベージュ色のフローリングを進んでいく。そこは大きな鏡の前だった。男の手が私の体の向きを、鏡の方に変えさせる。

私の息が荒くなる。自身の姿を鏡で見つめたからだ。

前髪が頬まで垂れ下がり、髪は乱れていた。顔には疲労の色が表れ、瞼が重そうだった。首には紫色のスカーフが首輪のように緩く巻かれていた。結び目のところが濃くなっていて、そこが私の唾液を吸い込んでいたのは明らかだった。

縄で縛られている上体を見て、胸が苦しくなり、男に再び、「解いてください…」とお願いする。
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