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人質交換を託された女
第13章 最後の女
両腕を縛る縄が解かれていくのが分かった。喪失感のような、何かもの悲しい気持ちが体を包んでくる。上体が起こされ、彼と繋がったまま、鏡の前に立ち尽くしていた。自ら両腕をだらりと下げるのは、いつ振りだろう。もう1日以上できていない感覚だった。

ここでようやく、私の白いシャツが袖から抜け落ち、長い役目を終えていた。丸裸になった肉体が、背後の田口さんに抱きしめられる。彼は男芯をけして抜こうとしなかった。

「戸北…最後の女になってくれて…ありがとう…」
彼の言葉を聞いて、抱きしめてくる腕の強さを感じ、彼は本当に死を覚悟しているだと悟った。私は彼の腕を愛しむように撫で続けた。

二人の接点からは彼の生きる証が、脚を辿って流れ続けていた。
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