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人質交換を託された女
第16章 侵入者
ドアベルの音がし、私は頭を上げる。きっと捜査員の女性が押したものだと思った。カウンセリングが一段落ついた、その絶妙なタイミングが気になった。

防犯レバーが掛かった状態で、玄関の扉を開けた。捜査員の女性が立っていた。
「ジャケットを忘れてしまったみたいで…」
と言うので、私は防犯レバーを解除して、扉を開けた。

私は「えっ…」と小さな声を上げる。

捜査員の女性が誰かに体を押され、私は彼女を抱き寄せるように体を支えた。

全身黒い服に身を包み、顔を黒いフルフェイスマスクで覆う男性の姿が一瞬見えた。目元にはゴーグルを付けていて、口と鼻が覆われていた。男性はすぐに扉の陰に隠れてしまった。

プシュッ…とスプレーを吹きかける音がした。
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