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人妻愛人契約
第10章 恋人たちの思い出~秋、溺れゆくカラダ
朝、ボーっと一人で事務所にいると、おはようございます、と星奈が入ってきた。

「おはよう」

「社長、早いですね」

星奈は肩にかけていたバッグを机の上に置いた。

「希実も愛未もいないからね。家にいてもやることがなくて」

「女将さんたち沖縄ですもんね。いいなあ。私も行きたいなあ……ん?」星奈は顔を顰めると、くんくんと鼻を使って空気を嗅ぎはじめた。「社長、この部屋なんか匂いませんか?」

「そうかな。僕は何も匂わないけど」

「そうですか。弟の部屋に入ったときと同じような匂いがするんですけど……生臭い匂いが……」

祐樹は、ドキッとした。あの匂いだ。いい年をして恥ずかしい。

「じゃ、じゃあ、少し窓を開けようか」

祐樹は顔を赤くして窓を開けた。

仕事中、祐樹は何度もコクリコクリと船を漕いだ。一睡もしてないから、さすがにきつかった。頑張ってはいたがパソコンの画面を見ているうちに、瞼が落ちてきてしまう。

「社長、大丈夫ですか?」

心配して星奈が声をかけてくれた。

「ごめん。ちょっと疲れてて」

「少し休んだほうがいいですよ」

「そうだね」

星奈の言葉に甘えて、祐樹は宿泊客のチェックアウトが終わると、母屋で少し仮眠をとることにした。

1時間くらい寝るつもりだったのが、目を覚ますと2時を過ぎていた。3時には、次の宿泊客が到着する。

希実がいないときになんてことだ――。

祐樹は慌てて事務所に戻り、宿泊客を迎える準備をはじめた。

そんな祐樹を見て今度は慎吾が、

「社長、顔色がよくないてすね。私がやりますから、どうぞ休んでてください」

と言ってくれた。

星奈にしても慎吾にしても祐樹のことを心配してくれている。申し訳ないという気持ちになったが、その優しさが嬉しかった。心に染みた。

「ありがとう、慎さん。でも、希実が留守の時くらい僕がやるよ」

そう言って、祐樹は慎吾に笑顔を返した。
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