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一夜限りでは終わりたくない
第1章 一夜限りの関係
里香に言われて気が付いた。
営業部のメンバーは私を見てヒソヒソと何か言っている。
男たちはニヤニヤといやらしい目で私を見た。
すると営業部の課長が近づいて来る。
この男は下品で苦手なタイプだ。
「桜井さん、いろいろ噂になっているが…寂しかったら俺が慰めてやろうか?こう見えてテクニックには自信があるんだ。」
課長はニヤニヤと気味の悪い笑みを浮かべた。
その時、後ろから誰かが近づいて来た。
課長はその人物を見て、顔色を一気に青ざめさせた。
「井上課長、今の発言は立派なセクハラではないのかな?」
低音で艶のある声。
聞き覚えのある声に驚き振り返る。
「藤堂副社長…今のはほんの冗談なんです。…ね、桜井さん?」
藤堂副社長と呼ばれた人物を見て驚いた。
この男は昨日、私を抱いた男ではないのだろうか。
「井上課長、処罰は追って連絡させる。」
藤堂副社長はそれだけ言うと、歩き出してしまった。
私は思わず声を出していた。
「あ…あの…藤堂副社長!」
私は何を聞こうとしているのだろう。
まさか、あなたが私を抱いた男ですかと聞くことなんてできない。
藤堂副社長は無表情で振り返った。
「…何かな?」
「い…いえ…なんでもありません。あの…ありがとうございます。」
「…社内での出来事に注意するのは当たり前だ…気にするな」