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シュガーヒル
第4章 バレンタイン
そんな愉しい時間はあっという間に過ぎてゆく。
時計を見ると午後9時を過ぎていた。
もう、帰らなくてはならないとその時思ったのだ。
「もう、私帰らないといけない…」
「そうだね、もう9時を過ぎてる…」
「今日はありがとう。愉しかったわ…」
「僕もだよ。帰りはお金渡すからタクシーで帰るといいよ…」
「ありがとう…」
そう言うと彼は1万円を渡してくれたのだ。
赤レンガ倉庫を後にするとインターコンチネンタルホテルまで戻り、タクシーを拾った。
私はタクシーの後部座席に滑り込こんだ。
ヤマザキは窓越しにこう言ってきた。
「気を付けて帰るんだよ。また連絡するよ…」
私はその言葉を聞くと軽く頷いた。
運転手に自宅の最寄り駅を伝えた。
タクシーはヤマザキを残し滑る様に夜のみなとみらいを走って行った。
私は、ヤマザキがずっとタクシーが見えなくなるまで手を振っているのを見ていた。
私も後部座席から手を振っていた。
暫くすると、ヤマザキの姿がとても小さくなり見えなくなっていた。
タクシーの窓から月明りが見えたのを覚えている。