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淫夢売ります
第1章 貞淑な人妻:望む夢
【貞淑な人妻】

カラン、カラン
店の戸口につけたベルが軽やかに鳴る。

「すいません」

遠慮がちに声をかける。店内は狭く、おそらく5畳ほどだろう。部屋は縦長で奥行きがある。占いの館なので、それほどスペースは必要ではない、ということだろうか?
闇色のビロードの幕がいくつも天井から垂れ下がっている。そこに星座や神話をモチーフにしたキラキラ光る飾りがつけられており、何やらそれらしい雰囲気を作っている。

「どうぞ、おかけ下さい」

奥から女性の声がする。噂通り、女性の占い師のようだ。
視線の先にはひとつしか椅子がないので、そこに座れということだろう。ちょうど、黒いクロスをかけた机を間にはさみ、占い師と正対する位置だ。

「はじめまして、ユメノと申します」

若い・・・多く見積もっても20代後半。下手したら10代かも知れない。特に黒いベールを被っているとか、口布をつけているなどはない。
やや肌が透けているロングスリーブの白いブラウスに黒のスプライシングドレス。胸元にはこれもまた黒色のリボンをあしらっている。下半身は見えないが、机からはふんわりとした黒色のスカートがはみ出している。
何やら妙な色気があるファッションだ。

「こちらはモルフェでよろしいですか?」
噂に聞いている店。占いだけではなく、あるものを売ってくれるという。
「はい・・・。間違いございません。」
ユメノはにっこりと微笑む。
「占いでしょうか?それとも・・・」

言葉を切る。
そう、噂ではここで・・・。

「夢を買えると聞いたので」

緊張して、ゴクリと喉が鳴ってしまう。
やや手が震えている。
友人に勧められたのだが、半信半疑だ。

「木崎かなえの紹介で・・・」

ユメノは少し視線を外し、考えるような仕草をする。すぐに
「ああ!木崎さんですね。ご来店ありがとうございます。
 では、当店の販売する夢についても・・・」
「はい・・・」
「それは話が早いですね・・・。特に、夢の内容を選べるわけではありませんがそれもよろしいですか?」
「はい・・・」
「念のため確認ですが、当店でお売りする夢は・・・その・・・貴方様の欲求に見合ったものになっております。おそらく満足いただけると思いますが、料金は先払いとなりますし、返金等もいたしませんが、大丈夫ですか?」
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