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淫夢売ります
第18章 淫蕩遊戯:嗜虐の悦び
☆☆☆
気がつくと、マンションの扉の前にいた。扉はシックな黒に近い茶のオーク材を模した高級感があるものだった。マンションといっても私がいつも暮らしている安い団地風のマンションではなく、扉が室内に設置されている高級感あふれるレジデンスだ。

帰ってきた・・・。もう一つの私の家。夢の中の大切な場所。
バックからディンプルキーを取り出し、扉を開く。

ふわりと花の香りがする。広くて明るいエントランス。正面はリビングで、リビング左手奥が【彼】の部屋だ。

家につくまでは一刻も早く会いたいと思っていたが、ここまで来ると、いつでも会える、という思いからか、少し余裕が生まれる。

まずは、リビングに。広いLDKだ。右手に大きめの鏡が据えられている。紺色の何の面白みもないスーツに、黒い縁が少し太すぎるメガネ。ストレートのミディアムヘア。どこにでもいるを通り越して、認知すらされないような女子が映っている。

スーツを脱ぎ捨て、ミラーの横から入れるウォークインクローゼットから部屋着を取り出し着替える。ホットパンツと見紛うばかりの短いパンツにピッタリとしたタンクトップ、その上に軽く羽織れる上着。色はネイビーだ。メガネも縁の薄い丸いものに替える。髪の毛を少したくし上げると、それだけでもだいぶ印象が変わる。
鏡の中に、昼間の地味な自分とは全く違う、いたずらっぽくて、少し色気のある女性がいた。

対面式のキッチンに寄り、冷蔵庫からシャンパンを取り出す。私はそれほどお酒には強くないが、ここなら悪酔いする心配はない。バーカウンターのような椅子に座り、細いシャンパングラスに注いで一息に飲み干した。

体の中が火照るように熱くなる。鏡を見たわけではないが、頬は多分朱に染まっていることだろう。

心地よい酔いが回り始める。もう一杯飲もうか・・・。それとも・・・。
奥の扉、【彼】の部屋の方を見る。
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