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淫夢売ります
第5章 くちなしの恋:もしも私が…
「私はユメノと申します。どうぞ、おかけください」
勧められるままに席につく。

「今日はどういった依頼でいらっしゃいましたか?見たところ、学生さんのようですが?」
怪しい雰囲気に似合わず、割と気さくに話しかけてくる。
ニコリと笑うと、とても可愛らしい。

「あ・・・えと・・・夢を売ってほしくて」

こう言わないといけないと、噂では聞いた。

「夢を・・・。でも・・・」

ユメノが若干躊躇して見せる。私のような人がここで夢を買うことは少ないのだろうか?

「学生では売ってはいただけませんか?」
「いえ、そうではないのですが、ここで扱っている夢がどのようなものなのかは?」
問われて、私はコクリとうなずく。そのために来たのだ。

「わかりました。おそらくどなたかのご紹介なのでしょうが、念の為ご説明申し上げます。
当店で扱っているのは、いわゆる『淫夢』です。そして、夢の内容を直接選ぶことはできません。それはよろしいですか?」
私は黙ってうなずく。
「料金は前払いです。ないとは思いますが、ご要望に沿わない場合でも、返金等はいたしませんが、これも大丈夫ですか?」
「大丈夫です」
応じると、ユメノはニッコリとした例の笑みをこぼす。
「では、料金をいただきます。2万5千円です」
値段のことは噂になっていなかったので、万が一を考えて、お年玉も含め、10万円以上を持ってきていた。
それからすると、拍子抜けする安さだ。
私が料金を手渡すと、ユメノは横の引き出しから、一組のカードを取り出すと、手慣れた手つきでテーブルに広げる。

裏は丸や星、月の形などが複雑に組み合わさった幾何学模様、そして、表面はタロットカードや西洋の魔術書の挿絵のような図柄が描かれている。
概ね50枚くらいだろうか、それぞれ男性と女性が絡み合っていたり、キスをしているような図案があったりする。

「さあ、はじめましょう。
 この中から、最も惹かれるカードを一枚だけ、選んでください。
 大事なのは、自分に嘘をつかないことです。一番、自分にあったカードがかならずあるはずです。」

私はじっとカードを見つめる。
そして、一枚のカードに目が止まった。

ああ・・・これだ・・。
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