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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~
第1章 《序章》
《序章》
風が吹く度、まるで雪を思わせる細やかな花びらがはらはらと舞い上がり、散り零れる。無数の白い花びらは地面を覆い尽くすほどに散り敷き、真に冬に鈍色の天(そら)から舞い降りてくる雪が降り積もったようだ。
まだ早い春の風は僅かに冷たさを含んでいて、少女は身の傍を春の気紛れな風が吹き抜けてゆくと、華奢な身体を小刻みに震わせる。眼の前で風に揺れている白い花が、あたかも我が身自身のようにも思えてくるのだった。