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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~
第3章 弐の巻
 しかし、よくよく考えてみれば、帝と安子はれきとした母子なのだから、さしたる用事があろうとなかろうと、帝がふいに思い立って母后をおとなうことがあるのは別段不思議なことではない。何故、そんな当たり前のことに思い至らなかったのかと、我が身の思慮のなさがつくづく恨めしい。
 一番逢いたくない男に逢ってしまった。その衝撃は隠せず、公子は蒼褪め、身体が知らず強ばるのをどうしようもなかった。
 そんな公子を安子が訝しげに見つめていることにも気付かない。
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