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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~
第4章 参の巻
 公子の眼からとうとう涙が溢れ出した。
「帰して、お願いだから家に帰して。帰りたいの。ここにはいたくないの。後生だから、私を家に帰して下さい」
 大粒の涙が白い頬をころがり落ちてゆく。
「姫、先日のことならば、何も泣くようなことでもないし、恥ずかしがる必要はない。あれはごく自然なことなのだから」
 止めて欲しいと思った。男性にあんな場面を見られ、気を失って介抱されたことだけでも恥ずかしいのに、面と向かって、あのときのことを口にされるのはたまらない。
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