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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~
第4章 参の巻
「姫がこの干菓子が大の好物だと俺は誰から聞いたか、教えてやろう。そなたの父道遠から聞いた話だ。姫は干菓子の中でも殊にこの菊の形をしたものが好みゆえと、教えてくれたのだ。そなたが毎日、家に帰りたいとむずかってばかりいて、俺が困っていると告げてやったら、その話を道遠が俺にした。左の大臣は上機嫌で俺に言ったぞ。我が娘をよろしく頼みますとな」
「嘘、嘘」
公子は奈落の底に突き落とされたような心持ちだった。