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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~
第5章 四の巻
―まさか、ここは帝の寝所では―。
 狼狽して慌てて部屋を出ようと両開きの扉に手をかけたその時、背後の燭台で燃える蝋燭の火が揺れ、ジジと音を立てた。
 誰かがいる。公子は全身を竦ませ、恐る恐る振り向いた。そして、御帳台の前にひそやかに佇む人影を認め、悲鳴を上げた。
「あ―」
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