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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~
第5章 四の巻
 公子は厭々をするように首を振る。
「止めて、私は、主上のお側に上がるつもりはありません。お願いだから、私を父の許にお返し下さいませ」
「まだ、そんなことを言っているのか」
 帝の声がゾクリとするような冷たさを帯びる。
 更に帝が一歩踏み込んでくる。公子はたまらず帝に背を向け、木戸を開けようとしたけれど、外から閂でもかかっているのか、公子の力では固い扉は動きもしない。
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