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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~
第5章 四の巻
「父は、―左大臣である私の父は、そのことを承知したのでしょうか」
 それは、公子にとって最後の頼みの綱であった。縋るように見つめた公子に、帝が冷笑で応える。
「ああ、そのことなら何の心配も要らない。左の大臣はあっさりと承諾したぞ。念願の正一位太政大臣への昇進、更に内覧の宣旨を与えることを条件に、そなたの女御入内の話を歓んで受け容れた」
 公子の顔は見る間に蒼褪めた。
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