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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~
第5章 四の巻
―大丈夫、御仏はまだ私を見放されてはいない。
 そう思うと、公子は少しだけ勇気が湧いてきた。しかし、現実として、これからどうすれば良いのかは判らない。このまま隠れ続けることは無理がある。夜の深い闇が身を隠してくれる中はともかく、朝になれば、すぐに見つかってしまう。
 帝は生来、冷酷非情な気性だ。それに加え、公子は帝に抵抗し、香炉で帝を殴りつけ、あまつさえ二度も逃げ出した。今度見つかれば、到底ただで済むとは思えない。
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