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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~
第5章 四の巻
 やがて、男の眼に公子の夜着の至る所の綻びが映った。片袖は無惨に取れかかり、あちこちに乱暴に引き裂かれたような場所がある。帯も緩んで、それは何とも哀れな姿であった。白い首筋や開いた胸許に紅いアザが幾つも刻まれている。恐らくは強く吸われた跡に違いない。これだけでも、この娘が今宵どれほどの辛い想いを味わったのかは想像に難くない。
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