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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~
第5章 四の巻
 むろん、公子は我が身が絵物語の姫君のように美しくもないし、魅力的でもないと知っている。けれど、こうして見も知らぬ男の背中に乗って夜の闇の中を駆け抜けていると、今だけは自分があの絵物語の幸せな姫君になったような気がした。
 せめて今だけは夢見ていたい。夢を見させて欲しい。
 公子は、躊躇いがちにそっと男の肩に頬を押しつけた。ひんやりとした夜風が公子の頬を撫で、髪を揺らす。
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