この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~
第6章 伍の巻
どうやら、公明は、甥に最近、通う恋人ができたのではないかと思い込んでいるらしい。その恋人がしきりに今、都で大流行している〝落窪〟を読みたいとせがむので―などともっともらしい言い訳をし、伯父の誤解を良いことに、公之は伯父の許からせっせと草紙を持ち出していた。
「本当に公之さまには何とお礼を申し上げて良いのか判りませぬ。これほどまでに良くして頂きながら、何のお返しもできない我が身が口惜しくて情けなうございます」
「本当に公之さまには何とお礼を申し上げて良いのか判りませぬ。これほどまでに良くして頂きながら、何のお返しもできない我が身が口惜しくて情けなうございます」