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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~
第6章 伍の巻
自分という存在が抹消されてしまったことへの哀しみや落胆は感じなかった。もう昔のように帝の翳に怯える必要もない。そのことの方が嬉しい。内裏で過ごした半月間は、公子にとって、まさに生き地獄であった。いまだに公子は、帝が何故、あんなことを自分にしようとしたのか理解できない。卑猥な笑みを浮かべて身体中を撫で回されたり、弄られたりすることが、たまらなく厭で怖かった。
もう二度と、あんな想いはしたくない。