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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~
第6章 伍の巻
―その虫の生命の重さを理解できる姫は真に心優しいひとなのだと思います。あなたは何も恥じる必要はない。
 その言葉は、公子の心に温かくひろがった。
 二十年間の生涯の中で、公子の虫好きを理解してくれた人は、公之ただ一人だったのだ。
―何も恥じる必要はない。
 漸く、そう言ってくれる人にめぐり逢えたそのことがただ涙が出るほど嬉しかった。
 女郎花の黄色が涙にかすむ。
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