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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~
第6章 伍の巻
 心からの労りのこもった言葉に、公子はもう涙が止まらない。涙が堰を切ったように溢れてくる。
「おやおや、私はまた姫を泣かせてしまったようだ」
 公之がおどけたように言うと、公子は泣き笑いの顔で応えた。
「これは哀しみの涙ではありません、嬉し涙ですから、お気になさらないで下さい」
 そっと涙を零す公子を公之はなおも見つめていたかと思うと、やがてその手が躊躇いがちに伸びた。
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