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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~
第2章 壱の巻
 公子が生まれたその日からずっと傍にいて、この女主人のことを誰よりも理解していると自他共に思っている相模でさえ、この奇っ怪な癖だけはいまだにいまいち理解できない。
「仕方ないわね、相模がそんなに言うのなら。さ、お前、もうお帰りなさい」
 公子は不承不承といった様子で、毛虫をまた元どおりに桜の樹に戻してやった。乳姉妹の内心の不安など知らぬげに、明るい笑顔で雪柳の花を眺めている。
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