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ネコの運ぶ夢
第1章 捨てネコ
〜The abandoned cat〜
俺の住んでいるアパートの前に、膝を抱えた女性が座っていた。
都内にあるとはいえ、築40年の2階建てのボロアパートだ。駅からは程々に遠く、深夜に近いといえるこの時間帯では歩いている人など皆無である。
そんな中、階段の前のブロック塀に背中をつけ、身体を丸めるようにしてその女性は座っていた。あまり関わり合いたくもなかったので、一旦は通り過ぎたものの、階段を登りかけたところで思い直した。若い女性のようだったし、心配でもあったので、結局は後戻りして声をかけてしまった。
「具合が悪いんですか?大丈夫ですか?」
手を触れると痴漢行為と間違われそうなので、遠巻きにして声をかけてみる。
女性は顔を伏せたまま反応しない。
きれいな黒髪、時折、肩が上下するから死んでいるわけではないようだ。
恐る恐る肩を叩いてみる。
「大丈夫ですか?」
「ふにゃ?」
女性は、ちょっと顔を上げ、妙な声を上げた。
「具合が悪いのですか?救急車呼びますか?」
酔っ払いかな?でも、その割には酒臭くはない。
特に荷物等はなく、薄い茶色のワンピースを着ているだけだった。時計すらしていない。
「ネコは・・・捨てネコ・・・いや、捨てられネコです・・・。」
女性は意味不明なことを言って、またパタリと顔を伏せる。
途端にぐぅーっと妙な音が鳴る。
「ネコは・・・お腹が空いてます・・・」
家出人だろうか?やはり関わらないに越したことはない。
「ちょっと待っててくださいね。今、お巡りさんを呼んできますから」
何かしらの犯罪に関わってるかもしれない。さっさと官憲に引き渡そう。
俺が交番のある方に向け、踵を返すと、
ぐいっと服の裾を女性が掴む。
「ネコは・・・お腹が空いています・・・」
顔を伏せたまま裾を掴んで離さない。
・・・困ったな・・・。
俺はちょっと天を振り仰いだ。
俺の住んでいるアパートの前に、膝を抱えた女性が座っていた。
都内にあるとはいえ、築40年の2階建てのボロアパートだ。駅からは程々に遠く、深夜に近いといえるこの時間帯では歩いている人など皆無である。
そんな中、階段の前のブロック塀に背中をつけ、身体を丸めるようにしてその女性は座っていた。あまり関わり合いたくもなかったので、一旦は通り過ぎたものの、階段を登りかけたところで思い直した。若い女性のようだったし、心配でもあったので、結局は後戻りして声をかけてしまった。
「具合が悪いんですか?大丈夫ですか?」
手を触れると痴漢行為と間違われそうなので、遠巻きにして声をかけてみる。
女性は顔を伏せたまま反応しない。
きれいな黒髪、時折、肩が上下するから死んでいるわけではないようだ。
恐る恐る肩を叩いてみる。
「大丈夫ですか?」
「ふにゃ?」
女性は、ちょっと顔を上げ、妙な声を上げた。
「具合が悪いのですか?救急車呼びますか?」
酔っ払いかな?でも、その割には酒臭くはない。
特に荷物等はなく、薄い茶色のワンピースを着ているだけだった。時計すらしていない。
「ネコは・・・捨てネコ・・・いや、捨てられネコです・・・。」
女性は意味不明なことを言って、またパタリと顔を伏せる。
途端にぐぅーっと妙な音が鳴る。
「ネコは・・・お腹が空いてます・・・」
家出人だろうか?やはり関わらないに越したことはない。
「ちょっと待っててくださいね。今、お巡りさんを呼んできますから」
何かしらの犯罪に関わってるかもしれない。さっさと官憲に引き渡そう。
俺が交番のある方に向け、踵を返すと、
ぐいっと服の裾を女性が掴む。
「ネコは・・・お腹が空いています・・・」
顔を伏せたまま裾を掴んで離さない。
・・・困ったな・・・。
俺はちょっと天を振り仰いだ。