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ネコの運ぶ夢
第2章 寂しいネコ
そんなある夜、いつものように音子が俺の背後にいる気配を感じながら横になる。
「市ノ瀬さん?」
「なんだ?」
「なんでいつも音子の方を向いて寝てくれないんですか?」
なんでって・・・、なあ・・・。
「こっち向いている方が寝やすいからだよ」
「じゃあ、位置を代わってください」
いやだよ、と言ったが、何度も何度もしつこく言うので、寝る位置を音子と代えた。
ころん、と、やはり音子とは逆の方を向いて寝る。
「右半身を下にした方が寝やすいって、言ってたじゃないですか・・・」
今、俺は左半身を下にしている。音子に背を向ける格好だ。
「たまには逆を向きたくなることもある」
「じゃあ、また代わってください」
また代わるが、当然のように今度は右半身を下に。音子に背を向ける。
「むー・・・」
音子が唸るのに、構わずにいると、ガバっと上に乗ってきた。前にも言ったが、こいつは意外と胸がある。こんなふうにされると、胸が押し付けられてきて、変な気持ちになる。やめろ。
「市ノ瀬さん、ずるいです。音子の方を向いて寝てください。」
「ちょ・・・ま・・・重い・・・」
「女の子に重いって言っちゃダメなんですよ。これは法律で決まっています」
「決まってねーよ」
「音子の方を向いてください。じゃないと・・・・寂しいです」

え?

乗っかってきた音子の顔を見る。うっすら目に涙を浮かべていた。

「音子はここに来るまでずっとひとりでした。
 ここに来て、市ノ瀬さんがいて、毎日、毎日、一緒にご飯食べてくれたり、お買い物に連れて行ってくれたり、ひとりじゃなくて、嬉しいです。
 でも、市ノ瀬さんは昼間お仕事でいません。
 その時、音子は我慢しています。
 だから、帰ってきたときくらい、寝る前の少しの時間くらい、お背中じゃなくて、お顔を見たいです。
 音子はずっと、ずっと、寂しかったから・・・。」

音子の目からあふれた涙が頬を伝って俺の額に落ちる。
一滴落ちると、次々と落ちてきた。
うぐぅ、えぐっとしゃくり上げながら、音子が俺の身体の上で泣く。
涙と鼻水で顔がぐしゃぐしゃだ。鼻水までたれてきそうなのを見て、ついに俺は音を上げた。
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