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ネコの運ぶ夢
第3章 身を寄せるネコ
☆☆☆
「さあ!早く!!早く!!!」

夕食、入浴(シャワーのみだが)を済ませると、音子はそそくさと布団を敷き、座ってぽんぽんと敷布団をたたく。

いや・・・

「まだ、9時だぞ?」
「良いじゃあないですか、音子は市ノ瀬さんと一緒に寝るのが楽しみすぎて、午後中ワクワクしていたんですから!」

一緒に寝るって、お前・・・。
俺は軽く頭を押さえる。

「ちょっと、仕事するから・・・。美鈴さんはその辺でコロコロしててください」
えー!とか、ぶーぶー!などとうるさく言っているが、こんな早くから床について50男が眠れるかってんだ。
仕事がある、というのは別に嘘じゃない。まあ、急ぐほどの仕事ではないのだが・・・。

俺はラップトップを開くと、資料の検索をし始めた。仕事で使う統計資料の当たりをつけねばならない。ダイニングテーブルでパチパチとパソコンを打っていると、画面の向こう側にリビングが見える。そこでは、律儀に布団の上で正座をし、俺の方をじっと見る音子の姿があった。

き・・・気になる・・・。
というか、集中できない・・・。

それでも、30分は作業を行ったのだが、その間、微動だにしないで無言の圧をかけてくる音子に最後は、負けた。
本物のネコのようだ・・・。

俺が、ぱたん、とラップトップの蓋を閉じると、音子はぴくんと少し肩を震わせ、ぱあっと表情を明るくする。そんなに期待してるのか・・・。

ただ、まだ寝るには早すぎる。
「ええっと、終わったんですが、まだ寝るには早すぎますし・・・、ゲームでもしませんか?」
「ゲーム?」
俺はずっと使っていなかったトランプを引き出しの奥から引っ張り出すと、シャッフルしながらルールを説明する。「スコパ」という場にあるカードを互いに取り合う簡単なゲームだ。
とにかく、10時30分くらいまでは引っ張りたい。

手札を互いに4枚。場に4枚まく。
このゲームは手札と同じ数の札、もしくは手札1枚の数字と合計が一緒になる2枚以上の札を場から取れるゲームだ。最終的に札を多く取った人の勝ちだ。たしか、ダイヤを取ったら加点とかもあった気がしたが、細かいルールは忘れてしまった。
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