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ネコの運ぶ夢
第9章 お仕事ネコ
〜The cat is working〜
「市ノ瀬さんのお仕事場に行きたいです!」
ここ数日、音子が騒ぐ。
大抵は朝出勤するときに言うが、帰ってきてから「明日こそは!」と言うこともあった。
その度に「またな」「今度な」「いつかな」とのらりくらりとかわしていたが、あまりにも何度も言うので、ついに折れてしまった。
考えてみれば、この間の残業事件(?!)があってから言い出したということもあり、俺としても若干罪悪感が刺激されていたというのもある。
もちろん、くだんの事件の後、悲劇を繰り返さないためにも、音子用にスマホ(一番安いヤツ、かつ、俺とのデータシェアで通信料はかからないようにしている)を購入するなど対策は取ったが、音子としては昼間に俺がどこで働いているかをちゃんと確認したいと思っているらしいのだ。
『よか・・・た・・・市ノ瀬・・・さんが、帰ってこなかったらどうしようって・・・私・・・』
音子はあの時そう言った。『俺が帰ってこない』という事態を恐れたのだ。
彼女の過去に何があったかは知らないが、もしかしたら周囲にいる人が絶対に帰ってくる、と信じることすらできないような環境だったのかもしれない。
一度見せれば安心するだろう、という見通しもあったので、来週の水曜日に連れて行くと約束をした。当たり前だが、部外者を会社の中に入れることはできないので、そのことは重々説明をしておいた。
実は、俺が指定した日は、珍しく俺が外で仕事をする日でもあった。
なので、仕事をしているところを見たい、という音子の要望にも答えることができるのである。
「市ノ瀬さんのお仕事場に行きたいです!」
ここ数日、音子が騒ぐ。
大抵は朝出勤するときに言うが、帰ってきてから「明日こそは!」と言うこともあった。
その度に「またな」「今度な」「いつかな」とのらりくらりとかわしていたが、あまりにも何度も言うので、ついに折れてしまった。
考えてみれば、この間の残業事件(?!)があってから言い出したということもあり、俺としても若干罪悪感が刺激されていたというのもある。
もちろん、くだんの事件の後、悲劇を繰り返さないためにも、音子用にスマホ(一番安いヤツ、かつ、俺とのデータシェアで通信料はかからないようにしている)を購入するなど対策は取ったが、音子としては昼間に俺がどこで働いているかをちゃんと確認したいと思っているらしいのだ。
『よか・・・た・・・市ノ瀬・・・さんが、帰ってこなかったらどうしようって・・・私・・・』
音子はあの時そう言った。『俺が帰ってこない』という事態を恐れたのだ。
彼女の過去に何があったかは知らないが、もしかしたら周囲にいる人が絶対に帰ってくる、と信じることすらできないような環境だったのかもしれない。
一度見せれば安心するだろう、という見通しもあったので、来週の水曜日に連れて行くと約束をした。当たり前だが、部外者を会社の中に入れることはできないので、そのことは重々説明をしておいた。
実は、俺が指定した日は、珍しく俺が外で仕事をする日でもあった。
なので、仕事をしているところを見たい、という音子の要望にも答えることができるのである。