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ネコの運ぶ夢
第9章 お仕事ネコ
☆☆☆
「ここに、市民講演会を開催いたします。
 本講演が皆様の日頃の生活を潤す一助となれば幸いです。
 それでは、少し長丁場になりますが、ご清聴のほど、よろしくお願いします」

舞台上で頭を下げる。これで、俺の出番は大体終わりだ。
あとは、招聘した大学の先生の講演の後、先生へ御礼の言葉の一つでも述べれば管理職としては役割を果たしたことになる。

音子は会場の一番うしろにちまっと座っている。一般市民講座なので、ドサクサに紛れてひとりぐらい多く座っていてもわかりゃしない。ちなみに俺の開会の挨拶の時、一番うなずいていたのが音子だった。

大学教授の先生の講演のテーマは「犯罪と都市環境づくり」だ。犯罪が起きにくい環境を市民みんなで作りましょう、というお話だ。俺は面白いと思って聞いていたのだが、音子には退屈だったらしく、ものすごい勢いで船を漕いでいた。

まあ、こんなわけで、あれやこれやと細かなことは色々あったが、とりあえず、大きなトラブルがなく、ここのところのメインの仕事である、市民講演会は無事閉会を迎えた。
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