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ネコの運ぶ夢
第13章 家につくネコ
俺は目を見張った。
うちでは見たことのないほどばっちりと化粧をし、髪もきれいに結い上げているが、間違いなく、音子だ。
音子も、俺の顔を見て、わずかに動揺した素振りを見せる。
「はじめまして、静香です」
すっと頭を下げ、父親の隣、姉の向かいに座る。ちょうど俺の正面に京介、右手に京子、左手に静香(音子)という配置だ。

心臓が高鳴る。今すぐにでもその手を取って家に連れて帰りたい衝動に駆られるが、かろうじて踏みとどまった。

「市ノ瀬さんとおっしゃったかしら?市民講座の件は、産学共同研究をしている大学の先生などがよろしいかしら?それとも、実際にビジネスに携わっている者のほうが?」
「そうですね・・・もちろん大学の先生でもよいですが、一般市民向けですし、変な話ですが、宣伝効果もありますので、直接ビジネスに携わってる方でも大歓迎です。大体いつも数百人規模で会場は埋まりますので」
「まあ、素晴らしいですね。うちの会社の宣伝などしてもよろしいなら、私が話してもいいわ、よろしいかしら?お父様。」
「おお、適任だと思うぞ。若いうちは色々なところに顔を出しておくのもよいからな」

「ところで、静香さんもなにかビジネスをされてるんですか?」
一応声をかけないと不自然だろうと、気を使った風を装って声をかける。
「あら、この子は何もしてないのですよ。ビジネスにはある程度向き不向きがあって、この子はあまりそちらには向いてないようでしてね。・・・まあ、そんな子ですが、この度やっと使い道ができましたの」
コロコロと笑うというのはこういうことをいうのだろうか。京子は手の甲を口に当てて軽やかに笑った。この上なく嫌な笑い方だ。
しかも・・・。
「使い道?」
しまった、怒りのあまり低い声が出てしまった。
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