この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
トライ アゲイン
第3章 心だけタイムスリップ
「ねえ…やっぱり出勤するの?」
ラブホテルで朝を迎え
もっと小向に抱かれて微睡(まどろ)みたい安祐美と違って
仕事人間の小向はベッドを抜け出して身支度を整え始める。
「今日は朝から会議があるって君も知ってるだろ?
休むわけにはいかないよ
それに君も会社に退職願いを出さないといけないだろ?」
「そうね…じゃあ、私も頑張って出勤するわ」
昨日と同じ服装…
これだと二人でお泊まりデートをしたのがバレバレだ。
おまけにブラウスから覗く安祐美のデコルテには
小向が付けたキスマークが生々しい。
「私たち、デキちゃったのバレバレね」
「かまうもんか
お前と結婚するつもりなんだし」
『えっ?今なんて言ったの?』
交差点を渡っている途中で
シラっとそんなことを言われたものだから
あまりの驚きのために安祐美の足が止まってしまう。
そのタイミングで歩行者用の信号が点滅し始めた。
小向は、すぐ後ろを安祐美が歩いてきているものだと信じきって、一人でさっさと交差点を渡ってしまっていた。
安祐美の足音がしないものだから
不思議に思って小向は後ろを振り返った。
そこには交差点の真ん中で呆然と立ち尽くす安祐美の姿が…
「おいバカ!何やってんだよ!」
小向の声にハッと我に返った安祐美だったが
一台の車が彼女に向かって突進してきた。
キキキー!!
急ブレーキの音がしたが、
車は彼女を回避できずに、撥ね飛ばされた。