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エリート妻色情飼育
第8章 第七章 親子の野望
「ビンボーはアカン・・・」
幸造の口癖である。

幼い悟が興味深く眺める中、店の商品を何度も並び替え日々工夫を重ねていった。
そんな父を見て育った悟にとって、店が一種の遊び場であった。

幸造には悟だけが人生の、心のより所であり経営パートナーである。
息子との素朴な言葉のやり取りが随分、売上にも貢献したのは事実であった。

悟がいなかったら現在の繁栄は無かったと言っても過言ではないかもしれない。

二人は傷ついた心を労わり合うかの如く生きていった。

成長してアメリカに留学するまでの間、悟は受験勉強で忙しくても日に一度は店に出ていた。

そんな二人は一件、二件と支店を増やしていっても未だ満足しなかった。
やがて東京に進出して、雑貨から食料品までも扱う大チェーン店としてのしあがっていった。

相次ぎ仕掛ける価格破壊に、伝統ある大手の卸問屋から度々のいやがらせを受けながらも現在の隆盛を築いたのだ。

留学を終えて逞しく成長した悟を迎えると、加速度を増してグループは大きくなっていった。
今では卸問屋自体もその機能を失い、幸造の前にひれ伏している。

この写真の女性も昔、幸造を鼻であしらっていた大手問屋社長の一人娘だ。
幸造から多額の借金があった。

立場の逆転した男は娘を差出して秋元薬局と親戚関係を結ぼうとした。
そんな企みを一目で見抜いた悟は直ぐに断ったのである。

悟は結婚に対して、女に対して何の関心も持っていなかった。

いや、むしろ憎んでいると言っていい。

大人になった悟は今でこそ母の気持ちがわからないでもなかったが、世の中に復讐するかの如く仕事を広げ、女を漁る父の方にこそ愛情を感じるのである。

幸造も悟に対しては無償の愛を捧げ、他に子供が出来ないようにパイプカット手術をして自分の種を無くしたのであった。

妻について父は何も語らなかった。
悟も母の思い出さえも何も言わない。

だが二人の眼差しは互いの気持ちを汲み取り、理解しているのであった。
悟の瞳に残忍な炎が宿る。

「オヤジ・・それよりも・・・」

自分のアイディアを話しながら醜く歪む息子の表情に、幸造は思わず惹き込まれた。

「そ、それは・・成る程ぉ・・・」

二人のおぞましい企みは時間の経つのも忘れ、社長室の中で密かに練られていくのであった。
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